虚しい電子機器達の最後
ある日、道沿いの電信柱に燃えるゴミの袋が出されていた。
何処にでもある住宅街であればよくある光景。
燃えるゴミを見ても特に何も思うこと無くそのまま素通りをしようとした時、ふと何やら電子音らしき音が聞こえてくる。
リンリンリンリン ピーピーピーピー
最初は何処から鳴っているのか検討もつかなかったが、電信柱が近づくにつれ音が大きくなっていくのが分かった。
電信柱のゴミ袋をよく見ると、赤や青のおもちゃがギッシリ入っている。どうやらその中にある幼児向けおもちゃから電子音がなっているみたいだった。
引っ越しだったのか、それとも押し入れの整理をしたのか、外からでも袋の中が薄っすら見えるほどに沢山のおもちゃが入っていて、おもちゃ同士でぶつかりスイッチがONになったらしい。
その光景を見て、何時もならゴミ袋を見て何も思うことがなかった一瞬がその日1日中、心に引っかかりが出来る程に悲しさというか、虚しさに近い何かを感じてしまった。
誰も使うことの無く捨てられてしまったおもちゃ。だけれどもスイッチが入れば今でも直向にメロディーを奏でるおもちゃ。
恐らく数時間後にはゴミ収集車で収集されていく運命にあるけれど、でも正確無比に一生懸命音を鳴らし続ける姿がスッと私の心に入り、そして「電子機器の最後の虚しさ」という大きなテーマを残していった。
電信柱が遠くなるにつれ完全に聞こえなくなったあのメロディー。今でも遠い記憶の様に薄っすら聞こえてくる時があったり無かったり。