幽霊や恐怖映像に震えなくなってしまったある日と次のフェーズ
最近恐怖映像という類にまったく震えなくなってしまった。昔は定期的に放送されていた心霊番組を見ては恐怖に震えて、想像に想像が膨らみよく眠れなくなってしまったものだ。何日間も頭から離れなくなった事もあった。
小さい頃から恐怖や幽霊、怖いものが好きで本だったり映画だったりを見た。二十歳を超えた今でも相変わらず続いて、最近ではネットを活用し動画サイトにある恐怖映像見てはある感覚を探すのが日課になっている。
それは恐怖に震えたゾクゾク感だ。見過ぎたのかそれとも想像力が低下したのか、かつては必ずあった背筋が凍るゾクゾク感が悲しいか今では皆無。どうやら恐怖を感じるデフォルト値がうんと上がったようなのである。
人が何らかの恐怖を感じる時は脳の扁桃体という感情を司る部分が働くそうだ。扁桃体は恐怖という感情を生み出す場所でもあり、同時に半永久的な記憶を形成する場所でもあるという。
初めての恐怖を体験する時、人は100%の恐怖を受け取ることができる。しかし何度も似た恐怖を体験してしまうと扁桃体によって固定された体験として記憶される。いわゆる慣れだ。厄介なことに一度固定されてしまうと解除するのは難しいらしい。この慣れが今私の脳の中で起きていてゾクゾク感が得られないというわけ。
ではもう私は恐怖感を感じることが出来ないのかというとそんなことはない。ただこれまで以上の恐怖な体験をすればいい。しかし人は学習する生き物。似た記憶があればすぐに慣れてしまう。
それも固定記憶ならなおさら。
私は大人になった。恐らくそういうことなんだと思う。幼いころは色々なことを吸収するように人はできている。その段階であらゆる感情を形成する能力を身につけ記憶していく。そしていつの日かデフォルト値を超え、更なる感情を欲するようになる。欲すれば欲するほど遠ざかっていくのを目にすることで次のフェーズへ移らなければならないと気づく。
そう創る側へと。
欲するばかりでは新しいものは生まれない。だからこそアウトプットする誰かが必要とされる。恐怖映像を見てゾクゾク感を楽しみにしていた小さいころの私の様に、色んなワクワクを楽しみにしている未来のクリエイターの為に。