奉行の映画汁『第五回:高卒が見る【マネー・ショート 華麗なる大逆転】』
ご無沙汰してます。スタンプ作成が終わり、未だに創作意欲が家出した状態の蟹奉行です。早く帰ってこないかなぁ…(遠い目)
前回の寄稿で一区切りついたのですが、やっぱり記事を書くのも楽しいのでちょいちょい寄稿させて頂くことにしました。
毎月劇場で映画を見よう!というスローガンを抱えている僕は、もう一度改めて「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を見ようと思い、劇場に向かっていました。
前はシリーズを観ずに鑑賞したため、ファンサービス的なシーンを十分に楽しめていたわけではありません。しかし全作を見た今なら楽しみも倍増するだろ!という目論見で、2回目の鑑賞に臨んだわけですね。
しかし数分後、僕が手に握りしめたチケットは「マネー・ショート 華麗なる大逆転」でした。
理由は、その日服選びに困ってたまたまBB8(スター・ウォーズに登場するメカ)のUTを着ていたため、「”妖怪ウォッチの映画にジバニャンの服来て来るワクワクキッズ”みたいで恥ずかしいな」と思ったからではありません。断じて。ハズくないし。黒くて超オシャレだし。
心変わりした要因やはり、キャストの豪華さが気になったことと、その日がたまたま公開初日だったことでしょう。アカデミーも受賞した作品ですし、たまたま公開時間もちょうどいい時間だったため、興味を惹かれてしまいました。
しかし僕は完全に忘れていたのです。この映画が、「リーマン・ショックを取り扱った作品である」ということを…。
また、高卒の自分が、経済の”け”どころか”k”の字も知らないということを…!
そんなわけで今回は、経済知識皆無の僕が「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を観た感想を、綴らせて頂きます。
「Why?リーマン・ショック??」な方でも大丈夫👌
この映画を見ようと思った時、「経済の話は全然わかんないから、ついていけなさそう。」と思う方は少なく無いでしょう。正直、僕も見る前はそう思っていました。
しかし結論から言うと、十分に楽しむことが出来ました。
その理由は、この映画が知識のない観客に向けて、徹底した配慮のもと作られていることにあるでしょう。前提としてこの映画は、話自体に厄介な難点を抱えている映画だと思います。
1つは、話の内容自体が難しく、観客に求めるハードルが高いということ。
そしてもう1つが、話の顛末が最初から見えているということです。
この2つは観客層を限定する要因にもなり得る、かなり大きな難点だと言えるでしょう。しかしそういった難点をカバーするため、様々な配慮が凝らされた作品となっていました。
まず、金融に関する専門用語やリーマン・ショックが発生した仕組みについて、きちんと説明がされています。特にジェンガを使った説明シーンは、当時の米国銀行が行っていた住宅ローンシステムの危険性を、「観客にも、そして作中の登場人物達にも分かりやすく説明する」良く出来たシーンとなっていました。観客への説明を”わざとらしさなく”やってくれる姿勢は、日本映画やアニメも是非見習って欲しいですね、ホント。
また、説明してもなお理解が難しいのが経済です。リーマン・ショック自体が様々な要因の積み重ねで発生した事件なため、だんだん頭の中でこんがらがってしまうこともあるでしょう。
そのため今作では、「最悪、説明が理解できなくても十分に楽しめる」ようになっています。
まず、序盤はかなりコメディタッチに進行するのがこの作品の特徴です。トップレスのパツキンねーちゃんもちょいちょい画面に登場するので、少なくとも男性は退屈しないでしょう。
金融用語の解説を入浴中のブロンド美女に説明されても、全然入ってこねえよ!!!w
まぁそんな感じで、皮肉やジョークを交えつつ飽きないように話を進めてくれるので、観客としては安心です。リーマン・ショック直前の経済不況まで話自体は地味なのですが、それをここまで楽しく見せてくれるのは素直に凄いと思います。実際、アカデミーでも脚色賞を受賞していますしね!
僕も正直、途中から話自体にはついていけなくなっていたのですが、それでも退屈に感じることはありませんでした。
そしてこの作品のもう一つの魅力が、軽快なテンポとそれを生み出す音楽です。劇中では頻繁にタイピングシーンや造幣シーンが挿入されるのですが、その際にはタイピング音や紙幣がめくれる音といった環境音をつなぎあわせ、ノリの良い音楽になっていました。
また、大御所メタルバンド「メタリカ」の曲やグランジの神「ニルヴァーナ」のカヴァー曲(反吐が出る感じの曲でしたが、そういうネタです。)といったノリの良い音楽も流れるため、難しい話でもテンションが落ちることは無いでしょう。ちなみに、徳永英明の曲も流れてビビりました。(村上春樹の「1Q84」からの引用も出てくるので、ちょっとだけ日本びいきな映画かも。)
史実を扱った作品に必要なもの
…しかし、リーマン・ショックは実際に起きた事件であり、人の命や生活を奪った出来事でもあります。金融業界のみならず世界中の景気が悪化し、日本にも影響が及ぶほどでした。そのため、テレビの予告編を見て「なんか不謹慎な映画だな」と思った方も少なくないかもしれません。
ですが、この作品は後半に渡るにつれ、「リーマン・ショックが生み出した物」をキッチリと、誠実に描いています。日本版の副題に「華麗なる大逆転」なんてついていますが、実際には華麗でもなんでもない、非常に考えさせられるモラリズムに基づいた作品となっています。
”人の不幸を尻目に金を掴んだ男たち”の葛藤も描かれているので、まさに「不謹慎だ」と思う方こそ観てほしい作品なのです。
正直、「アウトローな俺達がイッパツ当ててやったっぜ」的な日本側の売り出し方には語弊があると思いますね…
海外版の予告編を参考までに。日本版とは結構ニュアンスが違っています。
まとめ
結論から言えば、”映画としてのポップさやエンターテイメント性”と、”金融業界への皮肉や問題提起”を両立したハイレベルな作品なので、興味のある方は是非ご覧になって頂きたいです。
ちなみに全く言及しませんでしたが、キャストは言うまでもなく最高でしたぞい。クリスチャン・ベールは”吃音症で片目が義眼”という難しい役をきちんとこなし、受賞は逃したもののアカデミー助演男優賞にもノミネートされました。また、スティーブ・カレルやブラッド・ピットも雰囲気にマッチしたキャスティングでしたし、特にライアン・ゴズリングの胡散臭さはかなりハマリ役でしたね…!
もし見に行こうと思う方は、リーマン・ショックに関するおおまかな知識をつけて行くと良いかもしれません。脳の中の話を整理する部分が別の所に割けるようになるので、より楽しみ易くなるでしょう。
以上が、高卒の僕が観た「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の感想でした。
今後も映画を観て語りたいと思ったら、こんな感じの記事を書くかもしれません。長々しくて申し訳ないですが、興味ある方はぜひ!
また、「この映画オススメだよ!」なんてのがあれば、Twitter上で気軽に声をかけていただけたら幸いです。それでは! c👀っ