奉行の映画汁『第二回:あなたの痛みはどこから?ジェイコブス・ラダー(後半からネタバレあり)』
ども!ご無沙汰しております。アチキ、蟹奉行と申すでヤンス。
半年以上かけて作り続けていたLINEスタンプがついに完成し、ようやく一段落付いている昨今です。と言っても実製作期間は2ヶ月程度で、残りの期間は遊んでた充電期間と言ったところでしょうか。スマホも人間も、充電は大事。
スタンプは現在、LINEクリエイターズマーケットに審査してもらっている最中ですので、早ければ数日後には販売開始となるでしょう。
その際には、記事の中で宣伝させて頂きます。記事をご覧になった皆様、スタンプを購入し方々で使いまくって、僕の財布を大きくしてください。m(_ _)m
さて、「奉行の映画汁」と題した駄文二回目の今回は、前回の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」とは打って変わって、少しだけマイナーな映画を取り扱おうと思います。
今回扱わせて頂くのは、1990年のサイコスリラー映画である「ジェイコブス・ラダー」です。
スター・ウォーズほどのビッグタイトルではありませんが、ゲーム好きの中にはこの作品についてご存知の方もいるでしょう。
この作品は有名なホラーゲーム「サイレントヒル」のモチーフの1つと言われており、映画の劇中で出てくる美術や特殊メイクなどのデザインが、サイレントヒルのクリーチャーデザインなどに取り入れられています。
また「ショーシャンクの空に」で有名なティム・ロビンスや「ホーム・アローン」でお馴染みマコーレー・カルキンなど、90年代にブレイクした二人の俳優が出演しています。
どちらの俳優も本格的にブレイクする前の作品なので、そういった目線で見ても面白い作品だと言えるでしょう。(ちなみにマコキンはチョイ役ですが、かなり重要な役となっています。)
Wikipediaではサイコスリラーとジャンル付けされている本作ですが、同ジャンルの他の映画とは少し毛色が違い、シンプルなスリラー映画ではありません。結構グロテスクなシーンもあるのですが、作品のテーマ的にはスリラーよりも適切なジャンルがあるように思います。(具体的に挙げるのは難しいですが…。)
自分が今回取り扱おうと思ったのも、ストーリーやテーマ故に醸しだされる「雰囲気」に惹かれたことが最大の理由です。この作品の雰囲気は、あくまで僕の主観ではありますが、ある病気を発症するときの状態と非常によく似ているのです。
あなたは、天気によって発症するタイプの偏頭痛を持っていますか?
僕は昔から、一日中暗く小雨が降ったり振らなかったりするような天気の日に、よく偏頭痛の症状が現れます。どうやら気圧の変化によって発症するタイプ偏頭痛があるようなのですが、詳しいことはわかりません。
ただこの症状が出た日は一日中頭が重く、脳みそをサランラップでびっちり巻きつけられたような、寝不足みたいな状態に陥ってしまうのです。そうなると、生きているのか死んでいるのかわからないまま一日が終わってしまう日も少なくありません。
あくまで主観ですが、「ジェイコブス・ラダー」は映像が暗くぼんやりとしており、上述した偏頭痛を発症してしまいそうな雰囲気が終始漂っています。そのため、最近では一日中暗い日になると「なんだかジェイコブス・ラダーみたいな日だなぁ」と思うようになったのです。
ですから、もしこの記事を読んでいる方が偏頭痛持ちであれば、本作は是非おすすめしたい作品となっています。偏頭痛持ちの方は、症状が現れる日のような感覚を疑似体験出来るでしょう。(もちろん出来なくても面白い作品です。)
さて、ここまでは頭痛持ちの視点からネタバレ無しで書かせていただきましたが、ここから先の感想はネタバレも含む内容で書かせて頂きます。この作品は他の映画に比べてもネタバレによるダメージがデカいので、未視聴の方でこれから観るつもりの方は閲覧しないほうが良いかもしれません。
3つの間で揺れる
本作はベトナム戦争まっただ中のシーンから始まり、ジェイコブが刺された瞬間に地下鉄のカットへと切り替わります。その後は、”妻と別居し別の女性と暮らしている状態”と”妻子と幸せに暮らしている状態”、そして”ベトナムで刺された直後、救出されている状態”の3つのシーンが断続的に切り替わっていく事になります。最初のうちは時系列がバラバラなのかな?と思ってしまいますが、オチがすべてを説明してくれるでしょう。
この作品は、シンプルに言うと「ジェイコブ・シンガーが死を受け入れるまで」の話です。生命の危機に瀕したジェイコブが、肉体的な苦痛や死への恐怖心に苦しめられながら、天国へと旅立つまでの決心を描いているのです。
・妻ではない女性と暮らし、死の恐怖に追われ続ける「夢」
・妻と子供が存在し、幸せな家庭を維持している「過去」
・ベトナムで刺され、生死の境で戦っている「現実」
この3つの状況をさ迷いながら、最終的にジェイコブは「現実」、死を受け入れました。
「現実」を受け入れるまで、ジェイコブは「夢」の中で様々な苦痛を味わい続けます。高熱に冒され、氷風呂に入れられ、車から転げ落ち、爆発に巻き込まれ…。これらはすべて、現実の痛みが夢へとフィードバックされて現れたものでしょう。そして時折見えるおぞましい幻覚は、ジェイコブ自身が感じている”死”そのものです。
ですが、死から逃れたい心は悪夢的な幻覚を「軍の使用した薬物が見せるモノ」と断定し、救われたい一心で奔走することになります。
また「夢」の合間には、幸せな「過去」の象徴である妻子が登場します。これは、死を受け入れる直前の走馬灯とも言える描写でしょう。特にベッドの上で写真を見るシーンは、幼少のジェイコブ自身の写真が含まれていたりと、かなり走馬灯っぽいです。
度々変化する状況に心をすり減らしながら、ジェイコブは「夢」の中をさまよいます。しかしどこまで逃げても、”異形の者”や”自分を見ている目”といった死の恐怖から逃れることは出来ません。そして、唯一の安らぎである整体師からは、痛みを受け入れるよう優しく諭され続けます。
どんなに希望にすがりついても、絶望的な「夢」から抜け出すことは出来ない。薬の製作者から軍の陰謀について聞き出した頃には、心身ともに疲弊しきっています。そして辿り着いた先で、自分自身に訪れた”死”を、安らかに受け入れることになるのです。
死を受け入れた瞬間、それまで暗くぼんやりとしていた景色は一変し、部屋の窓からは神々しい光が差し込みます。部屋の階段には、交通事故で失った息子の姿が。天使のような息子に手を取られ、ジェイコブは天国への階段を登っていく…というのがラストシーンです。
ストーリー的には救いようがない話ですね。本作は2ちゃんねるの「初心者におすすめ元気が出る映画」コピペ(実際には鬱になる映画だけを記載している)にも採用されている、いわゆる鬱映画です。
そんな救いようのない話ではありますが、僕は現実味のある話のようにも感じました。夢の中で陰謀論という”夢みたいな”希望にすがる展開は、「受け入れがたい死の直前に見る夢って、本当にこんな感じなんじゃないかなぁ」と個人的には思います。
あと、氷風呂から目覚めた直後のティム・ロビンスの表情がかなり好きです。本作の他に「ショーシャンクの空に」「宇宙戦争(スピルバーグ版)」と出演している作品を2つ鑑賞しましたが、この人何考えてるのかわからないような役ホント似合ってますよね…。
ただ、本作の中で1つの疑問点と、1つの不満点があります。まず疑問点は、冒頭の襲撃シーンで仲間達が突然狂いだすアレ。ジェイコブが刺される前の出来事なので、おそらく幻覚ではなく現実だと思うのですが….。そして不満点が、最後のテロップです。「ベトナム戦争で薬が投与されたかどうかは定かで無い。」的な文章が流れますが、先ほどのお仲間総狂いシーンとこのテロップのせいで、作品のテーマが結構ブレているように感じます。いっそカットしたほうが、「ジェイコブの走馬灯」として違和感なく飲み込める話だと思うのですが…。
以上が、「ジェイコブス・ラダー」に関する僕の感想です。人によって賛否がかなり別れる作品だと思うのですが、僕は雰囲気だけでも好きと言える作品です。あとこの作品を見て思ったのですが、マコーレー・カルキンの天使力半端ないですね。多分53万くらいある。現在は…まぁそれは置いといて、心に来る感じのホラー映画やホラーゲームが好きな方、心理描写を描く作品が好きな方には、本作は結構楽しめるのではないでしょうか。
また長々と書いてしまい申し訳ありません。(ヽ´ω`)
次回は、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」について書かせて頂きます。現在好評放送中の「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の話も交えながら、「キャラクターの実在感」について素人ながら思ったことを書かせていただけたらな~と思ってます。映画じゃない?なにそれ??おいしいの????
それでは、長文を読んでいただきありがとうございました。